この記事は講談社発行『週刊少年マガジン』で連載中の「不滅のあなたへ」の17巻の感想を書いたものです。
前巻では、ミズハの中にいるノッカーが正体を現し、
もう人を襲う旨がなく、むしろストレスを受け止め、心の抵抗力を増やしているといった話がされ、
また“黒いの”が体験したミチの復活劇では、人間に喜びと幸せを与えていた事から、
必ずしもノッカーが悪ではないという雰囲気が流れていきました。
はたして、本当にノッカーはもう害がないのか…?
それともやはりフシみたく殲滅すべきだと考えないといけないのか?
そんなような状態から17巻が開幕していくことになります。
では!
キャラ紹介も交えながら、感想を書いていきます!
考察や伏線要素にも軽く触れています(項目から飛べます)
※なお、この記事には17巻までのネタバレがありますので、先ばれが嫌いな方は要注意です※
⇒【ナトリvs偽フシが激熱過ぎた!!】
⇒【フシvs左手ノッカーが重要過ぎた!!】
目次
登場キャラ
ここからは今巻で登場する主要キャラを紹介していきます!
今回紹介するのは5名です!
フシ
・概要
本作の主人公。
地球の体表全てに根を張ったことで、ノッカーを殲滅した。
これには500年の月日がかかったが、そのおかげで現代では平和な世界が訪れた。
この時 フシは満を持して仲間達を復活させ、彼らの夢を叶えるべく居場所や居所を与えるのだった。
しかし、道中では、ノッカーもまた進化を遂げていた事が明らかになった。
ノッカーはもはや知覚できないほど 小さくなり、現代でもはびこっていたのだ。
フシはノッカーの存在を危惧し続けるのだった。
マーチ
・概要
ニナンナで育った少女。
大人になることを夢見ており、ままごと遊びが大好きである。
フシの名付け親でもあり、自分をフシの“ママ”だと言う。
現代で復活した際にはフシとその仲間とも再会した。
今はカズミツの家でお世話になっており、小学校に入るための準備も進めている。
グーグー
・概要
タクナハで育った青年。
優しい性格の持ち主で、
貧困ながらも犬に食べ物をあげたり、兄・シンに高額で売れる指輪を渡したりした。
しかし、その性格が祟って、
リーンを助けた時には、大木の下敷きになってしまった。
グーグーは目や鼻が壊れる程の重症を負い、怪物のような顔面となってしまうのだった。
これ以降は、仮面をかぶって生活するようになる。
現代で復活してからは、
フシとその仲間とカズミツの家で生活をしながら、高校に通っている。
なお、テイスティーピーチ財団のボンの賄賂によって、学校では仮面をつけたまま生活する許しを得ている。
トナリ
・概要
幼少期は両親とフクロウのガリア―ドと共に暮らしていたが、
7歳で母が死んで以降は多くをジャナンダで学ぶ事になった。
そこでは似た境遇の子供たちとして、
ミア、ウーロイ、ウーパ、サンデルと出会い、夢を語り合う程の親しい間柄となった。
また、本を書くことが趣味であり、フシと過ごした冒険記も後世に語り継がれた。
現代では、フシが気を利かせ、若い体で復活させた。
今ではフシと同じ中学に通うが、
そこで出会ったハヤセの子孫のミズハとはどうしても折が合わなかった。
しかし、その後には自分の考えを思い詰め直したことで、寛容な態度を取れるようになった。
その証として、ミズハから贈られた羽の髪飾りをつけるようになっている。
ミズハ
・概要
フシと同じ中学校に通う少女。
幼少期から何でも出来た完璧人間で、勉強や運動に困ったことはない。
大会に出れば優勝は当たり前で、学校に飾られているトロフィーもほぼミズハが取ったものである。
しかし、その背景には母のイズミの守護団からミズハを突き放したかった想いもあり、手厳しく育てられている。
それは母・イズミの教団を見返したいという気持ちもあった。
しかしその想いは次第にミズハにとってストレスになっていった。
それは、ミズハが死にたいと懇願してしまう程であった。
これが原因となり、カハクの代で抹消されていたノッカーがミズハの気持ちに呼応して復活した。
ノッカーはそのままミズハに寄生し、かくして、ミズハは守護団18代目継承者となるのだった。
⇒【フシvsノッカーに終わりの兆し⁉】
⇒【ユーキの体にノッカーが入った⁉】
見所
ここからは個人的に面白いと思った見所や名場面を3つだけ紹介していきます!(他にもいっぱいあります)
過保護フシ
今巻の前半はほのぼの回(日常回)がメインですが、
フシの過保護っぷりが目立っていました…
それは、フシの皆を幸せにしたいという気持ちや心配性な所が先行し過ぎていたせいですが、
妙なことにそれと同時期に不幸な出来事が連続して起き始めます。
この辺はもうギャグ回って感じでしたが…(笑)
フシが久々に家に帰ってみると、
エコは反抗期で、猫のように四つん這いになって“フシャー”と威嚇してきますし、
庭で倒れていたマーチはダイイングメッセージなるものを書いていてただならぬ状態でしたし、
カイやグーグーやハイロは警察にお世話になっていたためにパトカーに送られて帰宅する始末でした…。
また、ご飯のシーンでは、トナリはご飯だというのに末期試験に夢中で険しい表情をしていましたし、
ハイロは急にご飯を吐くと同時に入れ歯が全部 ぶっ飛ぶという不幸な事態が連鎖する有様でした……
これを見ていたフシは思わず「幸せじゃなさそう…」と皆の事を心配し始めます。
まあ…これだけ立て続けに悲劇が起きたら、誰でも「ヤバい…って」と思いますよね…(笑)
でも結論から言いますと、
これはそれぞれが現代に適応としていただけで、
“苦”ではあったかもしれませんが、ただ決して不幸という程の大袈裟なものではありませんでした。
また、グーグーやハイロは将来を見据え、カズミツの家から旅立つ事も決めていました。
グーグーはタクナハへ行きたい旨を伝え、
またハイロは世界を見て回りたいという理由から一年以内には家を出て行く予定だと伝えます。
何より、現代で復活を遂げたグーグーですが、最初はタクナハに居ました。
この時のタクナハの様子を語ったシーンはかなりエモかったですが、
グーグーが復活した場所は酒爺の店でした。
そこは500年前とほとんど変わりがない状態で、
更に店を守っていたのは兄の子孫でした。
また、店内にはリーンの肖像画が飾られていましたが、
店員からは、
店員「その方はリーン・クロップ 昔この店をきりもりしていた女性です 結婚もせず ずっと恋人の帰りを待っていたんだとか」(大今良時先生/不滅のあなたへ/17巻引用)
と、
リーンが生涯かけてお店を守ったことと、
グーグーを待ち続けた事が明かされることになります。
この事実にはもう涙腺が崩壊寸前って所まで、感情がグッと湧き上がるものがありましたが、
しかし、その後に店員が見せた
“リーン、ピオラン、酒爺、グーグー、フシ、シン”が描かれた写真さながらの絵からの、
「おかえりさい グーグー」というセリフでもう涙腺が完全崩壊でした…
グーグーとしても、このタクナハに自分の未来が見えたと言っていますが、
「第三の人生はそこで過ごしたいんだろうな…」と伝わってくる内容でした。
しかし、残念なことに、
フシには彼らと決別するだけの心構えができていなかったのです。
彼らの気持ちを知ったフシは急にご機嫌を取るかのごとく、家事や洗濯や掃除を元気にやりだすのですが、
それは彼らを引き留めておきたいという気持ちの表れでした…
そして、この日の夜には、
遂にフシの口から本音がこぼれることになります。
その本音とは、
“自分を置いて先に死なないでほしい”というものでした。
フシはさらに続けて、
「仮にシんでもまたここで生き返らせるから、それでいいよね?」
…と、話を続けてもいます。
これに対してメサールは、
「お前みたいに永遠にシんで生きてを繰り返して欲しいってことか?」
と、若干 圧のある態度でツッコんきますが、
これに対しフシは怯えてしまい、その場から逃げ出す始末でした…
まさに子離れする心の準備が出来ていないという心境が目立つ回でした。
もちろん、
フシの500年かけて守ってきた彼らと、離れたくないという気持ちもわかります。
そもそもフシの“大好きな人たち”と変わらない日々を過ごしていきたいという気持ちは、
それこそ狼のジョアンとなった際に訪れた少年での家で感じた、
「ずっとここにいたい」
と、思った気持ちから表れていたと言えます。
そういう意味では、これがフシの持つ原初的な欲求なのかもしれません。
しかし好奇心や探求心に突き動かされるのが人間です。
一つの場所に留めておくのはやはり至難の業。
フシが出会った少年も結局危険を承知の上で冒険に出かけていきました…
最終的には死ぬことにさえなってしまいましたが、その行動に後悔はなかった事でしょう。
更に、その少年の姿を獲得したフシもまた、
結局はその探求心という衝動に駆られ突き動かされていたと言えます。
その中では、マーチと出会い、
マーチ「とにかく 今しらない ぜんぶのことをしりたいわ 大人になるってしっていくってことでしょ?
マーチ「もちろん ふーちゃん あなたもいっしょ いっしょにしって いっしょに大人になっていくの」(大今良時先生/不滅のあなたへ/2巻引用)
“知ることが大人になる道”だと教わったり、
ピオランからは文字や言葉を教わったり、
グーグーからは人としての基礎を教わったり(掃除、食事、仕事)、
トナリと過ごしたジャナンダでは人々を献身的に守る姿勢を見せるようにもなり、
そして遂にレンリルではノッカーに勝利し、
500年の月日をかけ駆除にも成功させましたが、
全てはやりたいからやったことに過ぎません。
行動原理は、ただそれだけの原初的な欲求から来ています。
親に自由を縛られていたリーンだって、自由を求めて家出をしていたわけですし、
器から解き放たれた“ファイ(魂)”にしたって、
黒いの「 器が壊れるとファイは解き放たれる するとファイは自分の意志によって自らのやりたいことをやり 行きたい所へ行けるのだ」(大今良時先生/不滅のあなたへ/7巻引用)
といった話があります。
人は魂の時点から自由であり、
そういう意味でも、フシであっても彼らの心を支配したり、縛ったりは出来ないのだと言えます。
これが、今回のフシに課せられた課題という感じでした。
この…何がなんでも皆を自分の元に残そうとするフシは、何処か健気で見ていて切ない気持ちになりましたが、
それだけ仲間達を大切に想っていると伝わるシーンでもあったので、
かなり感情が揺さぶられるワンシーンだったと思います。
みんな…最後の一回も優しかった
続いての名場面は、
フシの子離れするための心境が変わるシーンです。
結局、どうすべきか悩むフシでしたが、以前に産んだ子カメ達と接する中で、
“ある感情”を思い出すことになります。
ここでフシは、
海へ向かっていく子亀達を抱きしめると、
“一緒に住もう”と言って、
やはり子離れでいない気持ちが真っ先に出ていました。
それは、今の仲間達に抱いている気持ちと全く同じ感情でした。
しかし、
ここでフシはミズハに以前 言われた「私を嫌いにならないで」
という言葉を思い出すことになります。
因みにこの時のフシの対応は、
ミズハにお団子を上げるだけ上げると、真っ先に家に帰るという選択を取っています。
離れるのがイヤイヤ言っていたフシですが、そんなフシも結局は想われ人からは離れていたのです。
この体験のおかげでフシは今までの“お別れ”の場面を思い出すことになりました。
フシが思い出したのは、
ピオランやパロナやリーンや酒爺、レンリルの人達とのお別れのシーンでした。
ここでフシが何を思ったの明確な描写はないですが、
一つは“別れ”というものが必ずやってくることを察したか、
或いは、離れ離れになったからと言って、
心まで離れ離れになるわけではないと悟っていたのだと思います。
そうして、フシは子亀を海に放っています。
まさにフシが変わった瞬間でした。
何よりも特筆すべきはフシが自分で下したという事かなと思います。
今までは何かと“黒いの”が指示してくれましたし、
それまでも落ち込むたびに誰かが励ましてくれました。
それは、パロナだったりマーチだったりピオランだったりボンだったりグーグーだったりと色々ですが、
“ここから先はフシ自らが物事を判断していかなくてはいけない”
と、そう表現していたようなシーンにも思えました。
そのわかりやすい変化の描写としては、
黒染めしたニュースタイルや、
フシがグーグーにタクナハ行きの飛行機チケットを渡すシーンと、
そのグーグーを笑顔で送り届けるシーンなどが描かれた訳ですが、
この際にフシが自らバイトをしてお金を稼いだシーンなんかも、
心境の変化を現していたシーンと言えますよね。
つまり、
痛みや不幸が全くない世界という何もかもを“0”のノンストレスにしたがるフシですが、
その痛みや不幸すらも背負う覚悟が決まったような、
そんな雰囲気を感じさせるワンシーンだったように感じます。
まさに、責任ある大人へと成長したと思えるシーンです。
これが今後のノッカーとの戦いにどう影響していくのかが見物ですね。
⇒【ナトリvs偽フシが激熱過ぎた!!】
⇒【フシvs左手ノッカーが重要過ぎた!!】
ミズハの誕生日
続いての見所は、
ミズハの二度目となる誕生日シーンです!
本編では新学期が始まるという時でしたが、
出席名簿からはミズハの名前が来ており、
行方知らずとなっていました。
そしてフシは、
ミズハの居場所は教団の本拠地である地下にいると推定し、
ユーキ、ハンナ、カズム、スズヒコの5人でその場へ行くのですが、
そこで開かれた誕生日会はまさに“奇妙”という言葉が相応しい誕生日会となっていました……
この後、大波乱の展開となるのですが、
そちらはぜひ本編でご自身の目で確かめて頂けたらと思います!
次巻にも繋がる大事な場面となっています!
伏線&考察要素
続いては個人的に気になった伏線&考察要素です。
今巻で未回収のまま終わっているのが、
・トナリの悩み
トナリの悩みについてです。
これは年相応(中学生)になったせいで生まれた悩みだそうですが、
直近で言えば、
フシの顔をついつい連想してしまい、顔を赤らめているシーンがありました。
「これも体が子供になったせい!?」と、驚いてもいましたが、
まさに“年相応の悩み”って感じで、台詞ともピッタリです。
そうなるとトナリの悩みは、
フシに対する恋心である可能性が高いと感じます。
また、フシが「俺に解決できる?」といったシーンでは、「できるかもしれない」と返してもいますが、
これは、
“フシが自分の気持ちの答えてくれるなら”、
“可能かもしれない”
という意味合いだった事にもなります。
フシは以前に、
フシ「愛って何なのか知りたくて…」(大今良時先生/不滅のあなたへ/14巻引用)
“愛”について知ろうもしていましたが、
ミズハが教えるくらいなら、
トナリの方が正しい“愛”を教えそうなので、
そういった展開もまた悪くないのかなーと思えます。
後はそのキッカケが大事ですが、
仮にこの台詞が伏線となっているならトナリとフシの間で何か起こり得るので、
引き続き二人の関係には注目していきたい所ですね。
感想
ということで17巻は、
主にフシがメインで描かれていた印象がありました。
特に心情的な描写が目立っていて、
フシの過保護な一面と、そこから成長する様がメインで描かれていましたが、
今後のノッカー戦でも重要視されそうな描写なので、
覚えておきたい所ですね。
特に責任感みたいなものを負う覚悟みたいなものが定まった印象でした。
そして、終盤のほうではミズハの誕生日が始まり、再びバトル展開へ突入しています!
なお、このバトルはか~なり貴重ですよね…
何って言ったって、
ミズハの中にいるノッカーはハヤセから代々受け継がれているノッカーですが、
仮にここで和平が結ばれるというのなら、
フシvsノッカーの長きにわたる戦争も終わりを迎える事になります。
まあ…生きたいと思う願望が強いフシ達と、
魂の解放によって楽園(死)へ導こうとするノッカーとでは、
利害の一致は起こり得ないんですが、
線引きが不可能ってこともないでしょう。
例えば、
フシも死を願った人についてはノッカーに託すという選択肢を設ければ、
決して悪くない関係性が出来上がります。
“黒いの(サトル)”が体験したミチの生き返りの一件なんか、
まさにそれを証明しているワンシーンだったと言えますよね。
ちなみに、
フシ的には相変わらずノッカーは殲滅したいという感じですが、
一方で青木ユーキは“仲直りが大事”、“悪さはしないと約束させよう”と言っていることもあって、
仲直りする可能性もなくはないです。
そういう意味では、
第2部の結末はもしかしたら共存という形になるやもしれませんね。
そもそもノッカーは既に色んな人間に小さくなって寄生しているそうですから、
これを全排除しようと思ったら相当 時間かかりそうです…。
それこそ“黒いの”が言ったようにまた1000年かけて退治してみるか?って話になるので、
今回ばかりは第1部みたいなラストにはならないんじゃないかと思えますよね。
或いは、
フシが神へ近い存在となるか…
それは海すらも作れるようになれば、そんなノッカーの殲滅すらも叶うかもしれませんが、
これは今後どうなっていくかが見物ですね。
ではでは、引き続き「不滅のあなたへ」を応援していけたらと思います!
17巻の感想でした!
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